■免疫の重要性(1)
「免疫とはなにか」
私たちは、さまざまな病原体に囲まれて生活しています。
病原体も生命であるから、体内で生き続け、増殖し、勢力を伸ばすために、毒素を分泌し体の細胞に障害を与え、自らが増殖しやすい環境をつくろうとします。
一方、私たちの体としてはそれを許しておいては、生体が被害を受けるばかりか生命にも影響がでてしまいます。
そこで体中の白血球が総力をあげて、病原体や異物と戦い退治するのです。
その仕組みが「免疫」です。
辞書的な解釈を借りれば
1・白血球が、外部から侵入してくるウィルスや細菌などを排除すること。
2・百日咳に一度感染すると、二度目は抗体ができるので感染しない。
1の場合は、免疫学で言う「細胞性免疫」、2の場合は「液性免疫」といわれます。
元来、免疫の語源は、「疫」から「免れる」。
つまり、中世の農民が、荘園に賦役という税金を納めることを免除されると言う意味から、今日の「免疫」と言う表現になったと言われています。
白血球という「兵隊」が、自分にとって異物である外部からの侵入者を排除するという働きについては先に述べた通りです。
それとともに、体の内部から出現した「異物(癌細胞等)」に対しても同様の働きをします。
白血球にも「B細胞」、「T細胞」、「マクロファージ」、「NK(ナチュラルキラー)細胞」など、さまざまな種類があり、それぞれが複雑なメカニズムで体を守るために働いていることが明らかになっています。
人体は、およそ60兆個の細胞からなり、そのうち「兵隊」すなわち白血球の総数は、約5千億個といわれています。
私たち一人一人の体は、このようにして、異物の侵入や出現(癌など)に対し、
24時間、万全の攻撃態勢を整えているわけです。
免疫細胞の能力としては、大きく、自己と非自己の認識能力(自分とは異なる異物の発見能力)と、異物への攻撃能力にわかれます。
何らかの原因で、免疫力が低下した場合、この異物の「発見能力」と「攻撃能力」が低下することになり、結果として病原菌や「癌」などの増殖を、食い止められずに許してしまうのです。
また、最近では、さらに白血球が分泌する生理活性物質「サイトカイン」が次々と発見され、そのメカニズムの研究に期待が集まっています。
※サイトカイン
白血球が分泌する生理活性物質で、生体内の細胞間相互作用に不可欠。
IFN(インターフェロン)、IL(インターロイキン)、TNF(腫瘍壊死因子)などがあります。
■免疫の重要性(2)
「免疫力を高める」
私たちがもし病気になったとき、それを治すのは誰でしょうか。
もちろん、病院に行って医師の診断を受けるので、医師が治すといえなくもありません。
最新の技術と適切な医薬品を使って患者を病気から救う努力をしてくれるが、これはあくまで「治療の補助」にすぎません。
医師と薬は病気を治す手助けをしているに過ぎないことを、理解しなくてはなりません。
病気を治す主体は、患者自身です。
患者の自然治癒力=生命力です。
医学や医薬の進歩は治療の主役ではなく、人間とその生命のもつ本来の「自然の力」が主体であり、永遠の主役です。
医療は、病気を治すための強力な「補助手段」であるが、同時に患者は、自己の免疫力を最大限に高める努力をしなくてはなりません。
現在ふつうに行われている補助手段としての治療法は、慢性肝炎などの治療の場合、「対症療法」に留まっているし、
また、感染症、エイズ、癌などの場合は、「薬剤耐性」が生じるので、投薬の経過にしたがって薬の効果が無くなってしまいます。
「薬剤耐性」:ウィルスや癌細胞などが特定の薬剤(抗癌剤など)に対して抵抗力を獲得し、薬剤の効果がなくなること。
薬剤耐性を得たウィルスや癌細胞に対して、さらに薬効を出すためには、より強い薬が必要となり、その効果が無くなるともっと強い薬・・・
と限りなく続くことになり兼ねません。
しかも、免疫細胞は、自己の正常細胞と異物(ウィルスや癌細胞)とを識別し、異物のみを攻撃できるが、薬剤は自己と異物の識別はできないため、自己の正常細胞まで痛めてしまいます。
これが、副作用として人体にさまざまな悪影響を与えてしまうのです。
強い薬剤は、より深刻な副作用をもたらします。
しかし悲観することはありません。
24時間私たちの全身をパトロールしている白血球に対しては、ウィルスや癌細胞が耐性を獲得することはできません。
活性化された免疫細胞は、どのようなときでもウィルスや癌細胞にとって脅威なのです。
薬で強力にウィルスや癌細胞を殺したあと、薬剤耐性を持った、残ったウィルスや癌細胞を白血球が殺せればベストです。
ただし、そのためには薬剤によって白血球も活性を低下させられるので、免疫力を高めるための何らかの努力が必要となります。
いったん病気になってしまったら、適正な治療を受けることが必要ですが、これからはそれに加え、自己の免疫力を最大限に高める努力をして、自ら病気を治すという姿勢も必要となります。
また、ふだんから高い免疫力を維持することによって、病気を未然に防ぐということも大切になってきます。
■「免疫力を下げる要因」
1・ストレス
ストレスが免疫系に与える影響は大きく、日常のストレス管理が大切です。
たとえば、ラットを過密状態で飼育した実験では、免疫細胞であるNK細胞の活性が、過密状態前の三分の一以下まで低下しました。
ストレスが長期間続く、受験生や入院患者などの免疫力も、著しく低下します。
2・加齢
人間の免疫力は、18~22歳をピークに年齢とともに衰えます。
癌年齢の始まりといわれる40歳代の免疫力は、ピーク時の半分にまで低下し、その後も加齢とともに下降を続けます。
加齢は自然の摂理であり避けることはできないから、免疫力を低下させる環境を改善する努力とともに、積極的に免疫力を高める努力が必要となります。
3・環境要因
・大気汚染、土壌汚染、水質汚染や、喫煙等による空気汚染
・職場(工場等)で長期間特定の化学物質にさらされる
・車社会における運動不足
4・食生活
「医食同源」という言葉が示す通り、正しい食生活を送ることは、免疫力を維持し、また高めるために重要な要素です。
飽食の時代と言われて久しい現代人の食生活は、食品添加物、加工食品、インスタント食品などの氾濫や、偏食といった、免疫力を弱める環境にあります。 したがって、健康維持のために欠かせない免疫力を、低下させないように心がけ、万が一病気になった場合は免疫力を高める努力が極めて重要となります。
■免疫不全
免疫機構がうまく機能しない病気を「免疫不全症候群」といいます。
生まれつき欠陥を持っている「先天性(原発性)」の人と、あとになって起こる
「後天性」の人があります。
近年世界的問題になっているエイズ(AIDS)も「免疫不全症候群」です。
これは、エイズウィルスが感染して起こる病気なので「後天性」の免疫不全です。
エイズウィルスは、主としてヘルパーT細胞を狙い撃ちをします。
T細胞は、細胞性免疫の主体となる細胞で、全白血球の70%を占める大部隊であるが、役割に応じて「ヘルパーT細胞」、「キラーT細胞」、「サプレッサーT細胞」に分かれます。
簡潔に役割分担を見ると、「ヘルパーT細胞」は、「キラーT細胞」に攻撃命令を出す
役割を持っています。
「キラーT細胞」は、直接エイズウィルスや癌細胞などの異物を殺すのが役割です。
(但し「ヘルパーT細胞」の指示なしでは攻撃を開始しません)
「サプレッサーT細胞」は、「キラーT細胞」に攻撃中止命令をだす役割を持っています。
実際には、これらT細胞はもっと複雑な免疫調節メカニズムを有しているようですが、大まかには以上のようになります。
エイズウィルスは、「ヘルパーT細胞」に感染しヘルパーT細胞の指示機能をマヒさせてしまいます。
また、エイズウィルスに感染したヘルパーT細胞を、キラーT細胞が異物として攻撃もします。
これにより、ヘルパーT細胞は直接の攻撃部隊である「キラーT細胞」にまともな司令を出すことが出来なくなり、キラーT細胞は司令官を失った、役に立たない部隊となります。
その結果、空中に浮遊するカビが肺で繁殖してカリニ肺炎を起こしたり、カポジ肉腫(皮膚癌の一種)を発症したりして、次第に衰弱して死んでしまうのです。
免疫不全になると癌の発生率も非常に高くなります。
特にリンパ腫(リンパ球の癌)や白血病が多いと見られています。
その理由は、免疫力が低いために感染症を繰り返し起こし、それを防ぐためにリンパ球が絶えず増殖を行い、増殖の過程で突然変異を起こして癌細胞になる確立が高まることが考えられます。